2020/5/31 聖霊降臨の主日(ヨハネ20・19-23)
ご存じのとおり、5月25日の夕方、政府は「緊急事態宣言」の解除を発表しました。
このニュースを耳にしたときに、喜んでいる人もいれば、心配している人もいます。先月7日に出された宣言はおよそ1ヶ月半後、全国で解除されることになりました。この期間に、私たちを含めて、新型コロナ感染症拡大の影響を受けている私たちは新しい生活の様式に適応しながら、外出自粛をしたり、自宅で仕事をしたり、家族との時間を過ごしたりしました。
安倍総理大臣が述べたように、私たちは「緊急事態宣言の解除後でも感染拡大のリスクをゼロにすることが出来ない」ことを認めざるを得ません。感染流行には今後も何度かの波があるという専門家の指摘があります。それゆえ、政府はおおむね3週間ごとに地域の感染状況や感染拡大のリスクを評価しながら、外出自粛やイベントの自粛や施設の使用制限などを考える必要があると述べていました。
さいたま教区本部からの第7次のお知らせによると、教区における公開ミサの中止は5月30日までです。それを政府の発表した宣言の解除の日にちと対照してみると、5月31日には、公開ミサがあることを推測した人は少なくないでしょう。しかし、水曜日の午後、教区本部からの第8次のお知らせが届きました。そのお知らせの中に、「公開ミサの中止を継続する」ということも書いてあります。
信心深く、熱心な皆様はしばらくミサに与れないという体験が今日までなかったことでしょう。そして、皆様は「いつ公開ミサがあるか。来月の中旬、ミサに与れるか。それとも、何ヶ月後公開ミサが始まるか」ということを自問したことがあるのではないでしょうか。現状では、私たちはまだ不安と試練の中で日々を過ごしています。
本日私たちは聖霊降臨の祭日をお祝いします。新型コロナウイルス感染症流行の終息が見えない状況の中で、私たちは教会と共に心を合わせて、沈黙のうちに聖霊降臨をお祝いします。もしかすると、現在私たちの感情は福音の中で描かれた弟子たちの感情と似ているかもしれません。「恐れと不安と絶望を抱く心」。
第一朗読では、使徒たちが聖霊を受けた背景が述べられています。彼らは同じ場所で同時に聖霊を受けました。イエスとのつながりと自分たちとの連帯を持たなかったとすれば、彼らは同じところに集まっていなかったはずです。そのような状況の中で、聖霊が彼らの上に降って来ました。「炎のような舌が分かれ分かれに現れ、一人一人の上にとどまった。すると、一同は聖霊に満たされ、“霊”が語らせるままに、他の国々の言葉で話しだした」(使徒2・3-4)。
イエスの受難と死を目撃した弟子たちはユダヤ人を恐れて、自分たちのいる家の戸に鍵をかけてしまいました。彼らは公の活動もできませんでした。公の活動が出来なくても、彼らは集まって、一緒に祈っていたにちがいありません。復活されたイエスは一致となったその共同体に現れて、聖霊をお与えになりました。「彼らに息を吹きかけて言われた。『聖霊を受けなさい』」(ヨハネ20・22)。
聖霊を受けてから、弟子たちは新しい人となりました。すなわち、彼らは恐れの念を抱く人から勇敢な人に、絶望した人から希望を持つ人に、自分の家に閉じ込もった人から外へ出かける人に変わりました。さらに、彼らは心の扉を開いて、聖霊に導かれて、イエスのゆだねられた福音宣教使命を果たしました。
聖霊降臨をお祝いする私たちは堅信の秘跡を通して、聖霊のたまものを受けたことを思い出して、神に感謝いたしましょう。確かに、聖霊のたまものを受けた私たちは第一朗読の中で語られた使徒たちのように他の国々の言葉を話すことはできません。しかし、私たちはイエスの弟子、教会と小教区のメンバーとなっていることを意識できると同時に、共同体と一致することをまねかれているのです。そして、コロナの時代にも私たちは弟子たちのように自分の心を開いて、聖霊の導きによって、家庭と小教区と社会との中で、イエスからゆだねられた福音宣教使命を続けられるでしょう。
カトリック大宮教会
主任司祭 谷 国定